宮島水中花火大会〜広島県宮島町



10回目の挑戦だった去年は気の緩みのせいか未だかつて無い12時前という遅い現地入り、
そして結果は散々で見るに見れない結果となってしまった。
今年は気合を入れ、初心に戻り朝一の船で宮島に乗り込むべく
2時に家を出て途中仮眠を取って5時に宮島口に到着。
涼しいうちに機材を搬入すべく始発の船で宮島に上陸し、
7時過ぎには今回の撮影場所である西の松原で機材を借り置きした。
年々場所取り競争は激しくカメラマンの前日入りは当たり前。
観覧者ですら朝一の船に乗り、着いた途端、敷物を持って徒競走が始まる。

西の松原での撮影は経験済みなので三脚を立てらせてオシマイ・・・という訳にはいかない。
今年の潮の状況は、満潮9時49分(343cm)、22時27分(372cm)の大潮。
今回の重要なポイントとして、
花火大会終了20時50分に潮位がどこまで潮位が上がるか。
それを把握するには朝の満潮時を確認する必要がある。
一応、下半身が浸かっても大丈夫な準備は整えているが、
翌日のことも考えて波打ちギリギリを想定した場所を確保した。
(その判断が今年最大の分かれ道となることとなる・・・)

ただ1つだけ心配だったのは昨夜の波打ち際の跡が妙に迫っていたということ。
昨日も大潮で370cmという高い潮位だったので、かなりの範囲で海水が迫ってくるに違いない。
そうなると砂浜の面積が狭められ、座っている観覧客は次第に行き場を無くして混雑する恐れがある。
そんな混雑を避けるにはやはり海水に浸かって撮影するのに限るのだが・・・
9時30分、朝食を食べて満潮の潮位を確認して波打ち際に三脚を立てらせた。


※右の写真:花火大会終了時には膝上まで潮位が上がっていた
 ちなみに三脚を海水に浸けたくなかったので、スーパーの傘入れのビニールを貰って防水仕上げしたものの、
 小さく穴が空いていたせいか漏水して、それどころか剥がすのが大変だった。
 次回はゴミ袋を巻きつけようかと思考中。

※左の写真:昨日の大潮370cmのラインからして今日もここまで来ると予想。
 三脚の前には大勢の観覧者が座り込み、そして潮が迫ってくるとカメラの前に立ち始めるので
 大型三脚が必要となる。

今年は10時に玉取祭が行われ、早くから大勢の観光客がやってきたり、
露店の準備で追われていたり、朝から宮島は大賑わい。
写友さん方々と軽く挨拶を済ませ、本格的に暑くなる前に一旦宮島を離れる。


※今年は珍しく西の松原でも朝一からカメラマンの三脚が立っていた。

宮島に再上陸したのは16時頃。
もう少し遅くても良かったが、宮島の西日を浴びながら待つのは恒例行事の一環。
鳥居より遥か沖まで干潟が広がっており、これが数時間後に海面になるのかと思うと自然とは不思議なものである。


※17時頃の状況。
 これから徐々に隙間が埋まっていきます。
 三脚の列の前に座っている人達は海面に浸かりますが一向に動きません。




※せっかく場所取りしても数時間後には強制撤去。
 今年は大潮のせいか海水浸かり組みは一人もいませんでした。

九州方面では雨が降っているらしいので、雨雲がこっちに流れてこないかと
アメダスでチェックしてみたが、雨の降る気配は無い。
それにしても妙に涼しい風が吹くのが気持ち悪いくらい怖い。
干潟も時間とともに消えていきあっという間に海面は目の前まで迫っていた。
アナウンスや関係者の方々による注意勧告が何度も繰り返し伝えられているが、
毎年のことながら直前にならなければ人は動かない。

撮影態勢も整えて19時50分、花火大会が始まった。
今年は花火大会に先駆けて復興支援花火が打上。
花火の内容、演出、流れ的には殆ど変わっておらず、
海をテーマに7景に分けて展開されていく。
長いアナウンスも今となっては煙が掃けてくれる必要な演出の1つ。
ここ数年、オープニングは冠菊と千輪の2発同時打ちで、子割浮模様もどきの尺玉が上がっていたが、
今年は何と2発とも千輪で目の前が百花園に染まり大勢の観覧客から驚きと感動が響いた。
機材は1本の三脚にアングルを装着して2台カメラ態勢。
そしていつものごとく、横か縦か錯乱状態に陥ってしまう。
こんな時は冷静に判断することが必要で、花火の打上の流れを把握して事前に身構えることが必要で、
例えば水中花火は1景につき二周し、最初は小さい水中花火で二周目に尺玉クラスが開花される。
しかし水中花火と単発のタイミングはプログラムによって違い、結局再び錯乱状態に陥ってしまったのは言うまでも無い。

感動の第1景が終わったところで過去11回参戦してきた中で思いもかけぬアクシデント。
それは花火の中断だった。
海水に浸かっているカメラマンに向かって、直ちに移動しないと花火を中断するという警察からの忠告だった。
しかし長年経験を積んでいる人なら、海水に浸かって撮るのは当たり前であり、宮島では名物の1つでもあり、
その忠告も毎年恒例のこと。
その経験が仇となったのか、膝上に浸かっているカメラマンは退去するまで打上を中断したのだから驚いた。
私も過去には上半身が浸かって撮影したこともあれば、
下半身が浸かっての撮影は何度もあった。
今年は大潮ということもあって細心の注意を払ってのことだったかもしれない。
それならもっと事前に退去させることは出来なかったのだろうか?
杭を打ってロープを張り、それより前に出さないことを徹底させれば、
こちらもわざわざ海に浸かることも無いし、
観覧者も最後まで安心して花火を楽しめるに違いない。
強制退去させられたカメラマンの行方はわからない。
移動したからといって、どこか他所で撮れる場所はどこにもない。
撮るどころか見れる場所すら無い時間帯に移動させるのは、もはやカメラマンに対する見せしめすら思えた。
幸いにも私は退去ギリギリのラインで撮影しており、
これがあと30分遅ければ退去勧告を受けていたかもしれない。
午前中の満潮位の確認がこれほど重要と感じた年は無かった。
通勤ラッシュの電車内並の混雑となった西の松原。
案の定、座っての観客は潮が満ちると同時に立っての観覧。
私の三脚もカメラマンにぶつかり、観客の手すりとされたり、
1ミリのブレが命取りである花火撮影の結果は果たしてどうなったか・・・
来年の対策としては、三脚の周りを座りの観覧客で固めるなど作戦を練らなければならない。
そして警察の動きも把握。
これほど考えることが山のようにある花火大会も珍しいのではないだろうか。


※花火が打ち終わる頃、私より海側の人達は強制退去させられた。

時折、警察と私との目が合う時がある。
脚立に座って撮影していたので海に浸かって無いと判断されたかどうかも今となっては定かではないが、
最後の最後まで退去されることなく無事に撮影を終えることが出来た。
風向き、花火の演出もここ数年の中ではかなり良かったのではないかと思う。
2度の中断というアクシデントを経て花火大会は無事終了。
今年はいろんな意味で勉強になり、それが次回の満潮時の撮影に繋がることになるに違いない。
機材の片付けに時間がかかり、気付けば22時を廻っていた。
去年からJRは松代汽船より早く客が掃けるので、のんびりしても22時30分には船に乗れる。
数年前は23時30分頃まで列が出来ていたことを考えると、JRも随分進歩した。
特に急いで帰ることもないので23時に船に乗り23時30分頃に宮島口に着いた。
花火を担当した堀内煙火店御一行も機材撤収が終わり、次の現場へと旅立っていった。
花火業者とともに乗り込み、一緒に現場を去るのもまた私にとって宮島花火の一環なのであった。





写真館 二千年一夜