大井川大花火大会〜静岡県島田市



思えば今年は中止の多い年だった。
5月の鞆の浦は雨のため中止。
阿知須は9月に延期、と思えば中止。
徳山港も開催から一転して中止。
8月最後に観覧した安芸高田市の花火は煙と雨で何も見えず。
こんな調子では2011年を終われない!と思った矢先、
大井川の花火が10月に延期になったことを知り、
これはもう私のために延期になってくれたものとして行くしかない!と思った。
おまけに開催日が10月ならではの鉄道の日記念乗り放題切符の利用期間でもあり交通費はクリア。
開催日は文句なしの秋晴れ宣言も数日前に発表され、
仕事もその日は休みで、逆に行かれない条件が1つも無いくらい良い条件揃いだった
名前だけは花火撮影を始めた頃から知っていた大井川の花火大会だったが、
ついに観覧撮影が数年越しに実現となった。

以前はよくやっていた久々の電車による遠征。
始発の5時に東尾道駅を経ち、実に9時間による長距離移動。
景色も変われば電車内で飛び交う方言も変わり、長距離電車移動ならではの雰囲気を楽しんでいると
9時間もあっという間であった。
14時00分頃、島田駅より1つ手前の金谷駅に下車。
ここから花火会場を俯瞰出来る牧の原に向かう。
駅から坂道を歩いて15分くらいで到着。
大井川を俯瞰出来る小さな公園には早くもカメラマン数名と場所取りのシートが敷かれて撮るスペースが無く、
ここは激戦ポイントなのかと諦めかけたが、
実は近くにいくらでも俯瞰ポイントはあり、むしろ何故に狭いスペースである公園で撮ろうとしているのかが謎であった。



初めての現場はとにかく現地を歩いて調査が欠かせないが、
今の時代、現地に行かなくても動画である程度雰囲気は掴めるありがたい時代となった。
どこからどのようにして上がるのかは事前に把握しているので、
適度な場所を見つけて場所取り完了。
個人的には花火を俯瞰するのは好きではなく、
ましてや初観覧であれば会場の雰囲気を味わいたいので会場付近で撮影したいところだが、
牧の原から撮影した画像に一目惚れして、この場を選んだ。
またここの花火は広い河川の両サイドから打ち上げられる、
まさに関門海峡を狭めたような会場なので、とりあえず今回は牧の原で様子見といったところ。
時間はまだまだ余裕があるので、ここから会場まで約1時間かけて金谷会場まで歩いた。

今日はSLフェスタがあったようで、金谷会場は花火というよりSL観覧で賑わっているように感じた。
実際に会場へ行くと大会本部のテントのみで人の姿は殆ど見られず、
本当に花火大会があるのだろうか!?と寂しい限り。
土手の道路は夏場のものだろうか?消えかかった場所取りした名前が多く残っている。
何故そこに新たに場所取りがされていないかというと、
河川増水の影響で今年は花火会場が400m下流へ移動したのが原因のようだ。
とりあえずプログラムを貰い、2尺玉の位置を確認。
島田会場にも行きたかったが、帰りの体力を考えて今回は断念。
来た道を1時間かけて戻る。



JRの線路を渡ってお茶畑の間にある坂道を登っていくのだが、
撮影ポイントはたくさんあり、気付けばカメラマンもちらほら出没していた。
牧の原から狙うメリットは標高がある分、街のネオンが綺麗に見渡せること。
大井川大橋を入れて、まさに大井川ならではの夜景花火写真が完成される。
お茶畑からでも狙えないことは無いが、若干標高が下がるが、
その分、距離が近づき花火の迫力も若干あるのではないかと思う。
今回は、道路から公園までの坂道から撮影。
この区間は通行止めになるので安心して撮影が可能。
後から来た車は常駐している警察により排除される徹底した厳しさ。
しかし早くから公園に止めていた車に関しては、
警告はするものの違反駐車扱いにせず規制時間が解除されるまで出さないようにマークしていた。

殺風景とした牧の原にもカメラマン、観覧客が増え始め、それなりに人気スポットだったことがわかる。
雷が打ち上がると、少し遅れて音が聞こえることから、それなりに離れていることがわかる。
今日は体感や感動は味わえない分、現像の仕上がりで感動させてもらいたいが、それは自分の腕と
天の恵みである風にかかっている。
牧の原から富士山が見えるので楽しみににしていたが、
今日は霞がかかって見えず、天気の良すぎる秋晴れが返って逆効果になった。
大井川大橋の右手に富士山が見えるので、
天気が良ければ河口湖のような富士山と花火のショットが狙えたかもしれない。



19時になると空も暗くなり、夜景スポットに推薦してもいいくらい美しい夜景が広がっていた。
19時30分、花火大会開始。
オープニングは復興支援花火として島田、金谷の二ヶ所から同時打上。
坂本九の「上を向いて歩こう」にのせて単発玉が打ち上がった。
両会場から一発一発タイミングの合った同時打上。
決して派手ではないが、もしこれが追悼花火だとすれば心が落ち着く演出ではないだろうか。
そしていよいよ両会場からスターマインが打ち上がる・・・打ち上がらない。何故!?
会場から流れるアナウンスがあまり聞こえないので、
どういう理由で中断になっているのかわからないが、この待ち時間は10分以上あったように思えた。
夜になって気温も下がり、ましてや高台で風が吹いて体感温度は余計寒い。
この中断は、静岡空港の発着に関係するものだったらしいが、
それならそうとプログラムに一言記載していて欲しいし、
それが無理なら20時打上開始でも良いのでは無いかと思う。
オープニングから10分以上の中断は長年多くの花火現場を経験してきた中で初めての出来事であった。
完全に集中力も切れて、距離が離れているせいもあるが打ち上がる花火を見てもテンションが上がらず、
シャッターを切ることはあまり無かった。
たまに連発が両会場から上がることはあるが、
スターマインに関しては、どちらかがスターマインを行い、片方は連発が上がる、もしくは上がらない。
そんな感じでプログラムは進んでいった。
会場から見れば多少楽しめるのかもしれないが、
距離の離れた牧の原からではまったく楽しめるどころか退屈すぎる内容であった。
そんな中、突如両会場から一斉に花火が打ち上がり驚かされる演出があった。
それが大井川大花火大会名物である創作花火。
20時打上になっていたので、もうとっくに終わったものだと思っていたが、
まさかの20時30分に始まった。
両会場から同時に3ヶ所以上の打上なので、あたかもワイドスターマインのように見えるのはまさに
牧の原から見ている人だけの特権かもしれない。
会場からだとどうしても遠近の差で同じ大きなにならないので、
それはそれで大井川ならではの面白さはあるが、写真にすると少し不自然に感じる。
関門海峡みたいに両会場がそんなに離れていないので
このプログラムに関してはまさに牧の原ならではの感動があった。
正直、今までのプログラムは忘れて、これだけのために来る人がいるのではないかと思うくらい素晴らしい演出で、
Vトラや花束、打上の絶妙なタイミングは高度なコンピューター制御によるものだと思う。
となると総合演出は神戸煙火だが、創作花火だけはイケブンが応援で一枚噛んでいるのではないかと予想する。
ちなみに金谷会場を探索している時に、静玉屋のトラックを発見。
その他、窪田煙火も協力している。



創作花火が終われば退屈な内容に戻ってしまったが、
以前から静岡の花火といえば銀冠菊による空中ナイアガラというイメージがあり、
その花火が時折上がっていたようなので、やはり全体を楽しむのなら会場だと思った。
プログラムのラスト、八重芯錦大冠菊の2尺玉で幕を閉じた。
2尺玉に関しては、夜景花火に拘り2台態勢で挑んだが、
何分、タイミングが分からずさすがに動画撮影だけは逃してしまった。
前露光している50mmではフレームアウトしているかもしれないので、
2台目は開花寸前でシャッターを切ったが、汗って28mmまで広げてしまいフレームインし過ぎたかもしれない。
こればかりは現像が上がっての楽しみだが、果たしてどんな結果になっていることか・・・
(そこがフィルム撮影の醍醐味)

1時間の花火大会だが終わってみれば21時00分。
正直言うと感動よりも疲労感でいっぱいだった。
急いで機材を片付けて急いで駅に向かうが、乗ろうとしていた21時20分の電車には間に合わず、
次の便では名古屋まで戻れず、どうしようかと乗り換えナビで検索してみると
豊橋から名鉄の最終で名古屋まで戻れることがわかり、
1000円の余計な出費が発生したが、何とか名古屋まで戻ることが出来た。
もし名鉄が間に合わなければ、豊橋から新幹線で名古屋まで戻る羽目になっていた。

1度は見てみたいと思っていた大井川の花火を観覧した訳だが、
間違っても8月の通常開催に見に行くことは無いだろう。
それでは、今回のようにまた10月に開催されることになったとしたら?
今度は牧の原ではなくどちらかの会場から見てみたい。
不満は多く残り、ここでも完全燃焼出来なかったが、
久々の電車による遠征が出来たのと、何より条件の良い花火観覧が出来たことは1つの良い思い出となった。






写真館 二千年一夜