井関・大矢納涼花火大会〜広島県三和町





この日はどうしても休めない仕事があり、
全国各地で行われる花火大会を羨ましく思いつつ定時を迎える。
尾道、笠岡、ちょっと足を延ばして落合などたくさんある選択肢の中から、
まだ一度も行ったことのない神石高原町の花火を選んだ。
以前から花火が上がっていることは知っていたものの、
数百発しか上がらない小規模の花火大会なので、どうしても選択肢に漏れていたが、
今回は仕事終わりに、尚且つ交通費がかからない場所という選択肢の中から神石高原町を選んだ。

18時に会社を出て国道182号線を北上。
神辺を抜けるまでは渋滞ラッシュに遭うが、そこを抜けると信号も無い山道なので1時間で到着。
以前はよく東城まで182号線を走っていたが、最近はすっかり走ることの無い道となり、
道の駅にローソンが入っていたのには驚いた。
そういえば、井関では大晦日にカウントダウン花火が行われるが、
あれは何年前だったか、井関へ向かう途中、大雪に見舞われ断念したこともあり、今思えば懐かしい思い出。



地区内にある広場が駐車場となっており、花火の打ち上げが21時からということもあり、さほど混雑はしていない模様。
連日の猛暑で茹だるような暑さだったが、さすが標高のある神石高原町。
道路の寒暖計は30度を切って涼しい風が吹いていた。
国道182号線を1つ入った狭い道が祭りのメインストリートとなっており、
たくさんの夜店が並んでいたり、広場ではステージや神楽を披露されて、小さいお祭りながらたくさんの人で賑やかになっていた。
その裏山から花火が上がる訳だが、保安距離、近くに古民家があるのに大丈夫なのか余計なお世話ながら心配になる。
住宅が出来たから花火会場が変わったり、号数が小さくなったりと大きな花火大会ではよく聞く話だが、
田舎の小さい花火大会では、暗黙の了解なのか見えない大きな力が働いているのかはわからない。
どちらにしても、ただでさえ近距離で打ち上げるのに裏山から上げるならなおさらなので、
撮影場所は国道を挟んだ棚田から井関地区の町並みを入れて狙うことにした。

20時30分頃に機材をセッティング。
今日はとても良い天気だったので、20時に打ち上がっていたら背景の夕焼けに花火が打ち上がり、面白い絵になっていたに違いない。
こんな時、デジカメなら理想の絵に仕上がるのかもしれないが、フィルムでも撮れないことは無い。
ただ21時から打ち上がる花火なのに背景が夕焼けでは、違和感があるので21時まで大人しく待つことにする。
少し蒸し暑く、煙が停滞する心配があったが、打ち上げ前になると風が吹き出し、半袖では少し寒いくらいだった。
上空は天の川が見えるほど満天の星空が広がり、夏とは思えなくクリアな空に花火を見るには絶好のコンディション。
提供読みが長引き、予定より10分遅い21時10分に花火が打ち上がる。
ついに大台の1000発とプログラムに記載されるだけあって、
花火大会の規模は、打ち上げ数で決まってしまうので、1000発という数はインパクトがあり客を引き寄せる魅力はある。
フジカによる打上など今年の花火に関しては大きく見直されたらしいが、
それでも1000発の花火を限られた予算で打ち上げるには、決して期待出来る内容では無く、
形の崩れた型物花火や単発、低空開花がかなり目立った。
まだ500発にして良質な玉を上げた方が良さそうな気もするが、
厳しい条件の中で、フジカだから成しえた花火大会だったのかもしれない。
実際に観客の反応も良く、風下だったにも関わらず煙は風に運ばれて、
今の時期にしては珍しく最初から最後までクリアな花火を見ることが出来た。



21時30分、花火大会終了。
周りを見渡すと夏なのにホタルが飛び交っていたのには驚いたが、
それだけ空気と水が綺麗だという証なのだろうか。
井関地区は、福山と東城のちょうど間にある地区で本当に何も無い所だと思って通過していたが、
会場でもらったリーフレットには、観光名所やお祭り、商店の案内などが記載されており、
尾道から車で1時間走らせただけで、まったく知らない景色に出会えたことが嬉しく思った。
綺麗な花火を出会うための旅も良いが、
花火撮影が切っ掛けでまったく知らない街に行くのもローカル花火の旅の魅力だと改めて思った。
帰りの寒暖計は25度を示しており、まさに自然のクーラーを付けているかのようだったが、
家に帰ると連日の熱帯夜で現実に戻されてしまった。







写真館 二千年一夜