やつしろ全国花火競技大会〜熊本県八代市

やつしろが近づくと、今年は久々に対岸から撮ろうと決めていたが、
年々、八代神社の満車時間が早まっており、
遅くとも11時までに着こうと思えば4時に家を出なければならない。
インターを降りた国道3号線沿いに非公認の有料駐車場がいくつかあり
対岸から見ようと思えば見ることも出来たが、結局今年も例年通りの場所に落ち着くことになった。

ここ数年間のノウハウで苦労せずに観覧、撮影、そして帰宅出来るからであるが、
何よりもメイン会場の方が対岸よりもアナウンスは良く聞こえて雰囲気や花火を楽しむことが出来る。
朝の支度や買い出しをして高速に乗ったのは7時30分。
帰省シーズンでもないのに妙に車が多く、広島ICを過ぎたところで1キロ渋滞にはまったのは予想外だったが、
ほぼ順調に車を走らせ13時30分頃に八代に着いた。





撮影場所は今年もほぼ同じ場所だが、
例年だと目の前の木々で微妙な立ち位置を決めていたので、
今年はナイアガラが無い分、木に左右されずに場所を決めた。
花火の筒が目視出来るまで上流側に行きたいところだが、通路用の投光器の光を浴びてしまい、
周りが明るい場所で花火の撮影は集中出来ないのでいつも避けている。
去年より1時間早く着いたが、土手の最前列はこの時間でも隙間なく埋まっているので、その後ろで三脚を置く。
プログラムに記載されているとおり、本来は観覧禁止エリアではあるが、車一台通れるスペースがあれば警察にも注意されることはないので、
いつも土手上で撮影しているが、なるべく道路の端っこでの場所取りを心がけたい。
とりあえず花火の設置状況を確認しようと河川敷を覗いてみると、
扇状の筒や尺玉など全体的に少し下流へ移動したような気がする。
新たにスーパーエキサイトシートが新設されたのが原因かもしれない。
下流に移動したということは、その分距離が少しだけ近く、少しだけ正面になったので何だか楽しみになってきた。
ただ良いばかりではない。
距離が近いということは、今まで保たれていた程よい距離感が縮まったので標準レンズでどれだけカバー出来るだろうか。
1つしかない広角レンズをどのように活用するか、長い待ち時間を利用して検討してみた。



物産展には行かず近くのコンビニで買っておいた弁当で遅い昼食。
後は沈む夕日を背に向け、プログラムを見ながらどんな花火が上がるのか想像したり、
のんびり八代会場の雰囲気を楽しみながら時間を過ごす。
今年のメイン会場はどこかのんびりしており、有料席も当日券が出ていたが、
花火が打ち上がる直前でも十分空席があった。
対岸は木々を伐採して視野も広くなったので、上手い具合に分散したのかもしれないが、
有料席が満席にならないのは大会運営に支障が出ないか心配である。

18時00分、今年は特にトラブルも無く定刻通り主催者の挨拶により花火競技大会がスタート。
この時間帯ではまだ明るくてオープニング花火を打ち上げるには勿体無いので、
去年みたいに長々と挨拶してくれると期待していたが、まさかの短時間で終了し、
18時05分くらいにオープニング花火が始まった。
ナイアガラが無くなり250mのワイドスターマインとなったオープニングをどのように飾るのか最初の注目ポイント。
エヴァンゲリオンの主題歌でもある「残酷な天使のエーゼ」が聴こえた時は、
一瞬、耳を疑ったが、後で八代亜紀のカヴァーと知った時は、予想通りと予想外が絡み合った。
5カ所の小玉と3カ所の大玉を絡ませたワイドスターマイン。
なかなかこのような演出を見る機会が無いので、風向きが悪く煙が停滞したのは残念だったが、
初っ端から夢中になってシャッターを切っていたので、残りのフィルムのことを考えて冷静さを取り戻す。
対岸からだと綺麗な夕焼けをバックに花火が狙えるので羨ましく思ったが、
競技に入るころには西の空もすっかり暗くなっていた。



普段見ることの出来ない花火師の花火と競技玉は内容はともかく見れるだけでも幸せに思う。
有名な花火師やお馴染みの花火師、
特に八代は九州業者も見ることが出来るので、大曲や土浦に比べると八代の方が愛着がある。
(大曲は行ったことないが、何より遠くて行けない)
ただ今年のスターマインに関しては例年に比べると少し物足りなさを感じた。
その中で塚本花火工業の「苔むす森」は、緑の星を苔に見立てていろんな花火で描き、
群を抜いて拘りの作品に思えた。
八代において塚本花火工業は本当に強くて、実際に去年に引き続き今年もスターマインの部で優勝した。
5号玉の部は個人的にアルプス煙火工業の「水光星」が好きだったが、
磯谷煙火店の「雪の結晶」も美しく、磯谷ワールドが少しだけ見れただけでも幸せに思う。
その他の入賞作品も素晴らしかったが、九州業者が一つも入っていないのは残念。
10号玉の部は、紅屋青木煙火店の四重芯が優勝したが、
アルプス煙火工業の瑠璃色万華鏡やホソヤエンタープライズの栄光の花など少し変わった割物に驚かされ、
芸術的な割物も良いが、個人的には八方咲や千輪なども見たい。
5号玉や10号玉の部は、スターマインに比べると派手さが無いので、
花火慣れしていない人には物足りないかもしれないが、
ぜひ芸術の高さに注目してほしいと思う。

その芸術の高い花火が楽しめる7号玉80連発の協賛花火。
7号玉の連発はここ数年お馴染みの協賛花火だが、
今年は日本煙火芸術協会会員による花火が24発、玉名が記載されており、
競技会に出場していない花火業者の花火が見れて楽しみの1つであった。
しかしいざ上がってみると、3カ所からの打ち上げで花火と花火が被ってしまい感動が半減。
見るならまだ良いが、撮影となると雑で見苦しい絵に仕上がってしまう。
ここは日本煙火芸術協会会員の作品を1発ずつ上げて欲しいが、
それだとあまり盛り上がらないのであれば、
どこぞの花火大会みたいに対打ちか、最低でも花火が被らないようにもう少し距離を開けて欲しい。
本当に勿体無い演出だった。

八代最大の見せ場であるミュージック花火。
年々進化していく青木煙火店の花火にもはや撮影では表現出来ないレベルに達してしまい、
ファインダーではなく、肉眼でじっくり見たいと思い、
ある程度、打ち上げ位置を確認したら構図を決めてカメラに触らず、ファインダーも覗かず肉眼で見ながらシャッターを切っていた。
距離が少し近くなった分、迫力も凄いが前列だと果たしてどんな世界が繰り広げられているのか想像出来ない。
映画と同じで距離は人により好みがあるが、撮影となるとやはり土手が程よい距離がとれる。
逆にメイン会場で見慣れたら対岸だと少し離れて物足りなさがあるかもしれない。
相変わらずパイロ系の放出量と左右に大きく飛び出す柳、
そして大玉が突如現れることで驚かされる。
ここ数年、このような演出が続いており、特に今年は和火が多く見受けられ、
人によっては暗いとか怖いと感じる人もいるらしい。
それとは対照にラストの冠菊、そして銀冠の一斉打ちで終わるのは、
花火という枠を超えて舞台を見ているようで、一連のストーリーを感じさせる。
音楽のチョイスも素晴らしい。
青木煙火店の自作だとずっと思っていたが、
Thomas Bergersenによる「Into Darkness」という曲が使われていることを知った。
最近の花火師は、花火以外の感性も必要で作る側の進化も問われる時代だが、
時には退化して昔のようなミュージック花火も見てみたいと思うのは時代の流れに逆らうことなのだろうか(笑)
すべての競技が終わり、最後の協賛花火は5号玉、10号玉130連発。
八代の愛唱歌となっている「わたしのまちは」を聞かなければ八代に来た気がしないくらいすっかりお馴染みの曲にのせて花火が打ち上がる。

20時15分前後くらいにすべてのプログラムが終了し、最後は花火師との光の交流。
そんな余韻に浸ることなく急いでシャトルバスの駐車場に向かう。
中盤のミュージック花火が終わる頃から徐々に帰る人がいるので、
どれだけ急いでもすぐシャトルバスに乗ることは出来ないが、
それでも20時45分くらいに乗ることが出来て、21時30分には駐車場に戻ることが出来た。
高速道路は自然渋滞が発生していたが、八代ICを過ぎるとスムーズに進み、
いつもの北熊本SAでラーメンを食べようと思ったが、
混雑して駐車場に止めることが出来ず、
その先のSAで久留米ラーメンを食べたが、やはり熊本に来たからには熊本ラーメンを食べたかった。



写真館 二千年一夜