鬼ノ鼻山の雲海〜佐賀県多久市

ハウステンボスから大町へ戻る途中、武雄市内が霧に包まれていた。
午後に止んだ雨に翌朝の放射冷却があれば雲海が発生する確率は高い。
3日は尾道へ帰るので体力温存のため早朝撮影はしないつもりだったが、
雲海が発生するとわかってわざわざ見逃す訳にはいかず、
この2日間の撮り高も悪いので急遽、3日も撮影を続行することにした。
場所は天山を予定していたが武雄に霧が出ているのなら近場で十分、ということで聖岳か鬼ノ鼻山のどちらかに絞る。
4時00分起床。
外に出ると上空に星が見えるということは大町に霧が流れていないので鬼ノ鼻山を選択する。
ちなみに聖岳と鬼ノ鼻山は、どちらも距離が離れていないので出発してから30分足らずで着く。
それを考えるとわざわざ4時に出る必要は無かったので、
本命の前に聖岳に行ってみた。
ところが灯り1つ無い不気味な雰囲気に外に出る勇気も無く断念。
大人しく鬼ノ鼻山へと向かう。




※一応、展望台

鬼ノ鼻山の登山口付近が憩いの場となっており駐車場も広くトイレも完備されている。
なのに自動販売機どころか外灯1つも無い真っ暗闇の世界が広がっており、
あたかも人間が立ち入ってはいけない雰囲気が漂っていた。
ここは少し明るくなってから山頂へ向かうべく、車内でしばし待機する。
6時30分、未だに肉眼で周りの景色が見えない。
上空は晴れているのに何故に景色が見えない!?
太陽が昇るのは7時なので、これ以上車内で待機する訳にはいかず、
懐中電灯を頼りに山頂を目指す。
駐車場から山頂まで遊歩道が整備されており徒歩10分もあれば辿り着く。
何年か前に興味本位で昼間に行ったことがあるので場所の雰囲気は掴んでいたが、
これが初めて訪れていれば恐怖で車から出る勇気は無かったに違いない。
ただでさえ不気味な雰囲気の中、山頂の展望台が鬼なので余計に怖い(笑)
しかし山頂から見渡す景色に絶句。
かなり開けたパノラマ風景なのは知っていたが、
これほど凄い雲海が広がっているとは正直、想像以上の景色だった。
これで雲海の名所になっていないのが不思議でならないが、
場所が場所なので隠れた名所として広まらないことを祈ろう。


※左:南の太良岳、ダイナミックな雲海が見えるが山が少ない
 中央:北の天山、麓の山まで雲海が来ないので迫力はイマイチ
 右:西の八幡岳、迫力のある雲海らしい景色だが、次第に呑み込まれる。日差しはしばらく当たらない


※左:太陽が上がる東方面は尾根が邪魔。尾根を歩けばどんな景色が見えるのだろうか。
 右:西の八幡岳、雲海は上昇して山の影に隠れる

雲海は素晴らしいが1つだけ残念なことがある。
昇る太陽の方角に尾根が邪魔して太陽がいつまで経っても姿を見せない。
6時30分の時点で駐車場が暗闇に包まれていたのはその理由だった。
たとえ雲海が広がっていても太陽が当たらなければ平凡な雲海で正直おもしろくない。
太陽が姿を見せたのは7時20分頃で、雲海や周りの山々にようやく日差しが当たりだした。
太陽が昇ると気温も上がり霧も上昇し、刻一刻と雲海は姿を変え、時に上がったり下がったりして低い山を隠したりする。
武雄方面に見える御船山が見えるということは、雲海の高さは約200mとなるが、
その御船山も次第に霧に呑み込まれ、まさに雲海は生き物である。
鬼ノ鼻山の標高は435mなので霧に包まれる心配は無く、いろんな方角から撮影が楽しめる。
北方面の天山、西の八幡岳、南は太良岳と標高1000mクラスの高い山に囲まれており、
それを考えると武雄から多久にかけて霧が溜まりやすい条件が整っており、
実は佐賀は雲海になりやすいことがわかる。
霧の発生元がわからないが、私の経験上、有田や山内辺りではないかと思うが、
運が良ければその霧が武雄から佐賀市に向けて流れ込むに違いない。



太陽が昇る東方面は尾根があるので撮影は出来ないとして、
北の天山は聖岳の影響か日差しがあまり当たっていない。
西の八幡岳は鬼ノ鼻山が影になっている。
それを考えると南方面の多良岳が一番日差しもあり空も綺麗なのだが、
この方角は山が低く、早々と霧に呑み込まれていた。
見るには最高の雲海スポットだが、いざ撮影となるとなかなか苦戦する場所であり意外とフィルムは消費しなかった。

結局、山頂に訪れる人は誰もおらず、この景色は独り占めとなった。
ネットでもあまり上がっていないので知る人ぞ知る雲海スポットだが、
展望台は狭く揺れやすいので人がいると撮影に不向きであり、
やはりこの場所はあまり広まらないことを祈ろう。

広範囲に雲海が広がっていたということは、どうしても気になるのが聖岳。
帰る前に寄ってみた。
こちらも何年か前に訪れたことがあるが、やはり目の前の木々が邪魔なのと視野が狭いので、
南側の太良岳しか撮影は出来ない。
それを考えるとやはり鬼ノ鼻山が撮影に向いているが、
標高300mクラスで展望出来る山を探せば雲海が撮れる可能性はある。
雲海といえば阿蘇や高千穂が有名だが、
数年後には佐賀も入って九州雲海三大名所になるかも!?


※大町に唯一残っている炭鉱時代の建物



写真館 二千年一夜