芸備線、木次線〜広島県西城町、島根県横田町

青春18切符のポスターを見て木次線を撮りたいと思って早何年が経っただろうか。
いつでも撮れるようにと下準備はしていてもなかなか機会が訪れなかったが、
今年廃線になった三江線を引き金に今回ようやくその機会が訪れた。

木次線の区間で興味のある備後落合から出雲坂根に絞って撮影場所を検討するが、
1日4便×上下なのでシャッターチャンスは1日8回となる。
始発は8時台とかなり遅いので朝はのんびり出発しようと思ったが、
せっかくなので芸備線を撮って木次線へ行こうと急遽予定を変更。
幸い芸備線の始発は木次線より早いので都合が良かった。
6時20分、鉄道ファンにはお馴染みの平子俯瞰と呼ばれる県道に到着。
過去に一度だけ訪れており、個人的にもお気に入りの場所だが、
離合は厳しく険しい県道なので撮影ポイントまでの道のりは決して気持ち良いものではない。
今の時期、平子地区の田園に水が張られ、その中を気動車が走るとても雰囲気のある光景を俯瞰出来る。
今日の天気予報は晴れ後曇だったが、朝から雲が多く日差しは期待出来ないかと思われたが、
7時02分西城発が通過する時に僅かながら平子地区に日差しが当たってくれた。



約1時間後に平子発の上りがやってくるので次の気になる撮影地へ移動。
国道沿いにある西城川に桜並木があり、
いつか桜の咲く頃に訪れたいと思い何十年が経っただろうか。
今回は桜が咲いていないが新緑がとても綺麗で、
雲の多い空も青空が広がり最高の撮影日和となった。
桜が咲いていればどれほど美しい光景だっただろうか。
そんな想像をしながら構図探し。
河川敷に降りる道が見つからず、国道から何とか川を入れて7時47分、平子発を撮影。
思いのほか構図が限られる場所だった。


※桜並木が続くが気動車が隠れる。


※太陽の位置から撮影は午前中がベスト

木次線の撮影現場へ向かおうと国道を走っていると、
先ほど通過した上りの気動車を追い抜き、どこか良さそうな場所が無いかと探していると、
備後落合駅手前に綺麗な藤が目に入り急いで撮影準備を整える。
この周辺は標高が高いので沿岸部と比べると新緑の工程が1週間遅れることは事前調査でわかっていたが、
藤の花も咲いていたのは嬉しい誤算だった。



思わぬ寄り道で始発である木次線の時刻が迫っていたので急いで撮影現場へ向かう。
当初、梶谷トンネルポイントを予定していが、
午前中は日差しが当たっておらず急遽変更。
そのまま北を北上して七ヶ所山トンネルを抜けた所にある唐松ポイントから狙うことにした。
紅葉時はカメラマンの人気スポットだが、今日は誰1人としていない。
午後が良いかと思われたが、意外と午前中の方が日差しの当たり具合が良い気がする。
8時41分の三井野原発を撮影。
南に向けてシャッターを切ったが、意外と北側も捨てがたい。
ここは撮影する時期やタイミングなど今後の課題にしておく。



9時00分、次の撮影現場であるスイッチバック俯瞰ポイントに到着。
実はこの場所こそ念願だった撮影場所であり、
何度か現地へ訪れて探しては見つからず、ネットでようやく場所を特定して訪れることが出来た。
わかりずらいと言えばわかりずらいが、何故に今までわからなかったのか思うような場所であり、
道なき獣道を予想していたが、しっかり道が出来ており急斜面はロープもあって上がりやすかった。
時間帯としては午後の方が良いらしいが、午前中でも山の斜面に日差しが当たり悪く無い。
9時47分、三井野原発を撮影。
たった一駅で距離も短いのに20分かけて移動するのだから、利用客や便数が少ないのも無理は無いが、
鉄道遺産としては非常に珍しく価値のある場所であり素晴らしい景色に感動させてもらった。
このような景色を埋もらせておくには非常に勿体無いが、
旧道や俯瞰場所の整備をするだけでも相当な予算が必要になるので、
そのまま隠れた名所として木次線の運命を見守っていくしかないのだろうか。



次に木次線に気動車が走るのは約2時間後の奥出雲おろち号。
正直、することが無いので観光名所巡りをしても良かったが、
体力温存のためにそのまま現地へ留まることにした。
延命水で有名な出雲坂根駅に寄ってみると、
おろち号の運行に合わせて売店が開かれており、
以前食べてとても美味しかった焼き鳥や仁多米のおにぎり、蕎麦、その他いろいろ売られていた。
せっかくなので焼き鳥とおにぎりを食べながら売店のおばちゃんから情報収集。
実は山に入る以上、一番気になるのが熊の目撃だったが、
山の奥に入らなければ大丈夫とのこと。
それを聞いて一安心だが、最近の熊は人里まで降りてくるので油断出来ない。
明るいうちは心配無いと思ったが、農家の人が鈴を付けて仕事をしている姿を見ると何とも言えない気持ちになった。

下りのおろち号は先ほどのスイッチバック俯瞰ポイントで撮影。
その後、備後落合駅に向かう途中、藤が綺麗に咲いて気になっていたポイントで待ち構えた。



13時台、上りのおろち号を梶谷トンネルポイントで待ち構える。
午後になるとすっかり日差しが当たり風が無いと川に映り込んでとても絵になるカメラマンには人気スポットである。
午前中にカメラマンを見かけたがこの時間は誰もいない。
車を止めるスペースが限られるので、追っかけはせずに早めに現地で場所を確保しておいた方が良さそうだ。



再びスイッチバック俯瞰ポイントに戻り、おろち号を待ち構える。
以前はおろち号と気動車の両方を撮れたらしいが、
現在はおろち号の出発がかなり遅いので不可能となっている。
13時50分に1449Dが出雲坂根を出発。
14時07分にいずも号が同じく出発して撮影して急いで1449Dを追いかけて梶谷トンネルポイントまで戻るつもりだったが、
さすがに間に合いそうにないので断念した。

午後になって天気予報通り雲の広がる空となり木次線の撮影はこれで終了。
午後の日差しをスイッチバックポイントで確認したかったが、
それは紅葉シーズンに取っておく。
帰りに芸備線の橋梁の調査をするため寄ってみた。
この時間帯なら14時37分発の備後落合発が間に合うので急いで撮影場所を決める。
国道183号線を走る度に気になっていた橋梁だが撮影には至らなかったが、
今回ようやく本腰で撮影する気になった。
橋梁の周辺に桜の木があるので撮影するなら春が良さそうだ。
今日は3本ある橋梁の中から第一小鳥原川橋梁を新緑を絡めて撮影。
結果としては午後より午前の方が良かったが、
6時台の次が14時台という何とも撮影泣かせな運行時間。
桜の咲く季節だと始発に日差しが当たりそうにないので午前の撮影は難しいかもしれない。
今回は現地調査を兼ねての撮影だったが、
機会があれば紅葉や積雪時にも訪れてみたい。



最後にもう一ヶ所、雰囲気の良さそうな場所で撮影しようと待ち構えていたが、
待てど暮らせど来ない。。。何故に!?
後でわかったが丘陵備北公園で開催されるイベントで乗車の乗り降りに時間がかかり遅延が発生したらしい。


※備後落合駅、山奥にありながら広い鉄道風景はかつての賑わいを想像させられる。

以前、何度か木次線を撮影したことがあるが、
今回、1日かけて撮影してみてわかったことは、
三江線が川ならば木次線は山の風景がとても似合い、撮影していて面白かった。
便数から廃線になるのも時間の問題なので機会があれば四季に合わせて撮影してみようと思った。
片道100キロ、2時間あれば来れる撮影場所をまた1つ見つけた1日だった。



写真館 二千年一夜