佐木島の桜〜広島県三原市

例年より早く桜の見頃を迎えた4月1日。
昨日の三江線撮影の疲れから今日は近場で桜撮影を考えており、
以前から行ってみたいと思っていた佐木島へ行くことにする。
アクセスは三原港と重井港のどちらかだが、
三原港だとフェリー料金も高く、かと言って徒歩だと時間がかかり、
レンタサイクルも考えたが、橋代がかかっても重井港からフェリーで行くのが一番の安上がりになる。
またフェリーだと三原港よりも重井港の方が始発が早く、
観光客がやってくる高速船よりも早く到着出来るので花見客よりもいち早く上陸出来る。
そんなことをいろいろ考えて計画を立てていたが、
当日の朝は生憎も曇空で出発を遅らせ、
それでも午後までには晴れる予報を信じて8時10分発に乗ろうと出発したが、
まさかの乗り遅れで9時45分発まで待つ羽目になった。

佐木島の帰りに寄ってみようと思っていた因島公園に行ってみると、
今日はさくら祭りが行われ、既に公園までの車の乗り入れは出来ずシャトルバスが出ているらしいが、
そのシャトルバスの出発が1時間後と話にならない。
桜の名所という訳ではないが、白滝山へ行ってみる。
この山に登るのは何十年振りだろうか。
山頂にいくつか桜があり、ありきたりな観光写真に花を添える絵になったが、
個人的には悪く無い景色であり、
欲を言えば霞が無ければ良かった。
霞みを避けて早朝、もしくは15時頃に訪れると面白い光景に出会えるかもしれない。
曇っていた空も徐々に晴れてきたので、1本フェリーが遅れたのは不幸中の幸いとなった。



9時45分、重井港を出発して約15分のクルージングは初めてなのでフェリーで佐木島へ行くのは楽しみの1つである。
佐木島には3ヶ所の桜名所があり、最初に鷺港の反対側にある塔の峰へ向かう。
徒歩だと30分近くかかるであろう距離も車だと信号の無い道なので10分足らずで着いてしまう。
海を見ながら散策するには最適だが、3ヶ所の桜を細かく回ろうと思えば、やっぱり車か自転車が便利である。
3ヶ所の中でも一番見応えのある場所で、来週は三原から近くの港に着く臨時便の高速船も出るらしいが、
生憎、今日は桜が見頃なのに臨時便の高速船は申請上の都合上、出ていない。
向田港の駐車場にテント市があり地元物産店が行われていた。
話によると昨日は積み残しが出るほどフェリーでやってくる車が多かったのだとか。
幸い重井港からはそんなに車は多く無かったが、
フェリー乗り場のレーンからして三原への行き交いが多いようである。
車はその付近にある公民館の駐車場に止めて徒歩で向かう。

10時30分、心配していた空もすっかり青空が広がり桜撮影には絶好の日和となった。
みかん畑の狭い道を歩いていくと山頂付近にたくさんの桜が咲いているのが見えてきた。
その姿は真っ白で雪が積もっているかの如く見事に満開。
普段いつも見ている桜がこれほど美しいと思ったのも一気に咲いた今年ならではだろうか。
桜だけだとあまりにも平凡でどこでも撮れるので、
桜のトンネルを歩きながら佐木島らしさを探す。
山頂は残念ながら展望台は無く俯瞰出来る場所が無いが、
海が見える開けた場所を探して桜と一緒になるように構図を練る。
山頂の広場は早くからお花見をしている人達がいたが、さほど混雑している光景で無く、
近くに車を止められないのでバーベキューセットを持ち込む人もいないのだろう。



時間帯からしてトップ光に近い日差しなので桜が白く見えるが、
早朝や午後の日差しが当たる姿も見てみたい。
そう思うと朝早い時の条件が合わなかったのが残念であり、それはまたの機会にしたい。
段々畑に桜を植えている様子から、もしかしたら昔はこの山全体がみかん畑だったのかもしれない。
下っていると若い桜の木も多数あったので、数年後にはもっと見応えのある姿になっているに違いない。

塔の峰を降りてテント市で軽く昼食を購入。
地元で採れたひじきが入ったご飯がとても美味しかった。
次に訪れたのは佐木島の南側にある道祖神の丘。
3ヶ所ある中でもあまり名前が出ないので穴場的存在であり、
港から離れているので歩いてまで訪れる人が少なくて訪れた時は数組の家族連れのみだった。
遊歩道や周りの景色を見ても、最近整備したと思われるが、桜の本数が多くて見応えはある。
こちらも展望台が無いので、開けた場所を見つけて海と絡める。
どこからとなくキジの鳴き声が響いて、喉かな瀬戸内海の光景に居心地が良かった。



島に唯一あるパン屋さんは観光客に人気のようで既に殆どが完売だった。
時間をかければ桜以外にも面白いスポットがあるようで、
砂浜には海浜セラピーなるものが行われているとか。
海岸沿いには所々菜の花も植えられて春の花が綺麗に咲いていて、
信号も車も無い小さな島をゆっくりドライブするには最適であった。



3カ所目最後の桜スポットは鷺港近くにある港の丘公園。
こちらは鷺港から近いことから3ヶ所の中で一番花見客で賑わっていた。
塔の峰も向田港から近いが、向田港を発着する船は鷺港に比べると少ないので、
鷺港に近い港の丘公園の方が花見を気軽に出来るのかもしれない。
港の丘公園も立派な桜スポットだったが、
残念ながら海が見える開けた場所は見つからず園内での撮影は諦めた。
港の丘公園に上がる階段から桜並木と海が一緒に見える場所があり、
フェリーも一緒に撮れる唯一の場所であり、なかなか面白い景色だった。
フェリーの便数は決して多くないが、たまたま13時台の重井行きが鷺港を発った後だったので運良くシャッターを切った。





階段を下りて桜並木の所へ行ってみる。
花見客を入れると絵にならないが、
潮が引いていたので海岸下から花見客が入らないように撮影。
海が綺麗でチヌが浅瀬で泳いでいたのには驚いた。
とりあえず3ヶ所の桜名所を巡ったところで、
先ほどまでの青空に雲が広がり撮影は夕方を待たずして終了。
先ほど重井行きのフェリーが出ていったということは、
次のフェリーまで2時間以上の時間が空いてしまった。
時間潰しに鷺港近くにある港茶屋に入ってみると、
閉店間際だったが、うどんを勧められたのでうどんを食べる。
見た目は素朴だが、地元で獲ったワカメをたくさん使ったある意味、贅沢なうどんは美味しかった。



もう一度向田港へ行って潮が引かなければ見れないお地蔵さまを見て、
15時50分発のフェリーに間に合うように鷺港へ戻った。
三原行きのフェリーを待つ車、そして三原からやってくる車の台数はこの時間になっても多く、
かつて大橋が瀬戸の島々を渡る前の賑わいを見ているように思えた。
初めて訪れた佐木島だったが、フェリーで訪れることでどことなく遠い世界に来たような気分になり、
喉かなみかん畑と瀬戸内海が広がる景色と桜に心癒される時間があり、
佐木島は広島県を代表する素晴らしい島であった。




写真館 二千年一夜