仁淀ブルーを求めて

翌朝の天気が気になってなかなか寝付けなかった。
天気予報では晴れのち雨で午後から雲行きが怪しい予報になっている。
日差しの当たる仁淀ブルーを撮るなら午前中に安居渓谷へ行くのが良さそうだが、
晴れた日に沈下橋巡りもしたい。
そんなことを考えながら再び眠りに着いた。
翌朝、窓の外を見ると霧で周りの山々が包まれており、
雲の隙間から見える青空がとても澄み切っていた。
そうとわかっていれば早朝に四国カルストへ行けばよかったのだが、
火山灰なのかわからない真っ白な空だった昨日の状況で誰がこの展開を予想しただろうか。
朝食を取って宿をチェックアウトして外に出ると大渡ダムの上空は真っ青な空が広がりとても暑い1日が始まろうとしていた。



いろいろ考えた結果、安居渓谷は曇っていても何とかなるので、
天気の良いうちに沈下橋巡りを行うことにした。
8時30分、まずは近くの大森沈下橋と継合沈下橋へ向かう。
有名な沈下橋ではないので案内板も無く、事前に調べた地図を頼りに農場試験場から下った大森橋と森口橋の下に2つの沈下橋があった。
川は綺麗ではあるが民家や会社などが入り込み思ったほど絵にならない。
時間をかければそれなりの絵になるかもしれないが、
今日は時間が無いのでまたの機会ということで撮影はパス。


※大森沈下橋


※継合橋





久喜沈下橋〜高知県吾川村

中津渓谷を過ぎてしばらく国道439号線を走って行くとコンクリート工場を目印に久喜沈下橋へ下る道がある。
9時15分、駐車場らしい駐車場は無く、橋の周辺に数台止める場所があるものの既に釣り人が止めていたが、
何とか車を止めることが出来た。
久喜沈下橋は昭和10年に造られた高知県内最古の沈下橋のようで国の有形文化財に指定されている。




深い渓谷の岩に架けられた沈下橋は幅が短いものの奇形の岩の状況から激流に耐えながらも未だ生活道路として活躍しており、
その状況を何とか写真で表現しようと構図を練ってみるが、
既に釣り人が場所を確保され思い通りの撮影が出来なかった。
うかつに近づくと針に引っかかりそうで、しかもものすごく邪魔をしているのでうかつに近づけない。
とりあえずコミニケーションがてら何が釣れるのか尋ねてみると鮎を釣っているのだとか。
高知の川魚といえばアメゴが有名だが、
仁淀川の上流で獲れる鮎は臭みも無く美味で高級食材として料亭などで取引されているらしい。
昨夜食べた魚は残念ながらアメゴだったが、やはり高級の鮎は美味しいのだろうか。
そんなことを思いながら再び撮影モードに戻り何とか構図を探してシャッターを切ったものの、
やはり心のどこかで不完全燃焼。
鮎釣りの解禁である6月以降を外して撮影することが今回の教訓となった。




浅尾沈下橋〜高知県越智町

国道494号線を南下して越智町に入り県道18号線を左折してしばらく行くと浅尾沈下橋の案内板がある。
川沿いの道を沈下橋に向かって進むと展望台とは言わないがとても雰囲気の良い展望スポットがありここで立ち止まって撮影。
ここの沈下橋はそれなりに人が集まっているように見えるが、
実は映画のロケ地でそれなりに名の知れた沈下橋なので訪れる人が多いのかもしれない。
朝のような天気であれば絵になるが、まだ10時なのに早い段階で雲が広がり予報通り晴れから雨に変わるのだろうか。
一瞬、山肌に日が射したタイミングでシャッターを切った。
周りの光景から意外と早朝に行けば霧がかかって雰囲気の良い沈下橋写真が撮れそうなので、
ここもまた1つ課題を残して次へ向かった。




片岡沈下橋〜高知県越智町

県道18号線を先に進むと同じ町内にもう1つ沈下橋があり、
道路沿いから見えるので迷うことなく到着。
10時30分、もう青空は見えずどんよりした雲が広がる空になっている。
これではとてもじゃないが絵にならないが、
県道から空を入れずに何とか構図を練る。
仁淀川も越智町まで下ると流れも穏やかで吾北辺りとは渓谷の景色も一変して穏やかな姿になっており、
そんな場所は観光客にとっては恰好の遊び場となっていた。
せっかくなので沈下橋まで行ってみたが小雨が降り出したので撤収。
穏やかな川の流れに映り込む山の緑が美しく、
これが新緑で晴れた青空なら最高だったに違いない。
ここでふと思ったが・・・来る時期を間違えたか!?



さらに先に進むと名護屋沈下橋があるのだが、
この天気で行く気になれず滝撮影に切り替えることにした。


長屋沈下橋〜高知県吾川村

越智町内まで戻ると小雨だった雲から嘘かと思うくらい暑い日差しが注いでいる。
この調子で大樽の滝へ向かおうと思ったが仁淀方面の空がどうも怪しい。
町内でガソリンを入れて、さて大樽の滝へ向かおうと思った瞬間、大雨が降り出した。
たとえ通り雨だったとしても大雨の後に狭い道や遊歩道は怖いので越智町内にある大樽の滝と堂林の滝は断念した。

この先天気がどうなるかわからないが、とりあえず来た道を戻ろうと国道494号線を北上して仁淀まで戻ると、
先ほどの大雨が嘘かの如く青空が広がり眩しい日差しが射してきた。
道路は濡れていたので先ほどまで雨が降っていたのだろう。
国道439号線を北上し、池川地区の手前に長屋沈下橋がある。
案内板が見当たらなかったので危うく長屋沈下橋を見過ごすところだったが、
長屋大橋が沈下橋を俯瞰出来る展望台となっており、
周りの茶畑に沈下橋が溶け込み、土居川に日差しが当たってまさに理想とする沈下橋の景色に出会えた。
ただ残念なのは橋の前で川遊びしている人がいて、さすがにいついなくなるかわからないので、
目立たないように広角レンズでなるべく引いた構図で狙う。
11時40分、青空に白い雲が浮かぶ下での撮影が出来たが、
訪れるタイミングが悪ければ大雨に見舞われこのような光景に出会えなかっただろうし、
逆に越智町で最高の景色に出会えたかもしれない。
日中、晴天であればそんな心配もいらないのだが、こればかりは仕方ない。






宮崎キャンプ場〜高知県池川町

長屋沈下橋から少し北上した所に旧松山街道の宿場町として栄えていた池川地区があり、
その地区内に流れる土居川がかなり美しいということで立ち寄ってみた。
地区内に宮崎キャンプ場という人気スポットがあるので訪れる人も多く、
駐車場はたくさんの車が止まっていた。
12時00分、眩しい太陽が燦燦と輝き、車外に出ると一瞬にして汗だくになった。
池川大橋から土居川を見下ろすと太陽が出ているお蔭で川の美しさがより際立って見える。
誰もいない土居川を撮りたいところだが、
ちょうどパドルボードをやってる人達がいたので撮り入れてみた。
さすがに空中に浮かんでいるような写真にはならないが、
川の雰囲気らしさの伝わる絵になったと思う。
もう少しいろんな角度から狙ってみたいが電線が邪魔して1カットのみ。



その後、キャンプ場を散策して構図を探してみたが川遊びしている人達が多く、
また暑さでかなり体力が消耗されるので切り上げた。
キャンプ場周辺は桜もたくさんあるので春に訪れてみたい。




安居渓谷〜高知県池川町

旧池川町内に安居渓谷があり池川地区から少し東に走らせると案内板があり、
そこから狭く険しい県道362号線を7キロほど上がっていく。
紅葉シーズンはかなりの観光客が訪れるが、この時期はどうだろうと思ったが、
13時の時点で駐車場は満車となっていた。
道なりに上がっていくとまず出迎えてくれるのが、みかえりの滝。
ただ木々に隠れてよく見えないのが惜しい。
この周辺は千仭峡と呼ばれて渓谷美が美しいがそこまで時間を掛けられないので通過。
満車で少し待たされながらも宝来荘の駐車場に到着。
ここから歩いて安居渓谷にある名所を巡っていく。
まず最初に出会う荒男谷では美しい川の水や奇形の岩を楽しむことが出来る。
浅く広い淵なので水遊びをしている人達も大勢いたがアブの多さに苦戦していた。



河原が広がる乙女河原は特に構図が浮かばず、その奥にある飛龍の滝へ向かう。
約700mの薄暗い遊歩道に不気味さを感じるが、このタイミングで大雨にでも見舞われると恐怖を感じる。
14時40分、秋なら既にタイムオーバーだが今の時期だと滝に光が当たるので問題無い。
パンフレットよりも雰囲気が違うのはまとまった雨が無かったので水量が足りず幅広い滝の右側に水が落ちていないからだった。
滝壺付近は奇形な岩がゴロゴロして下手に動くと怪我しそうなので1カットのみ撮影。
夕方になる前に急いで先へ進む。





せり割洞穴は飛ばして水晶淵に到着したのは15時40分。
日差しがあればさぞ綺麗な仁淀ブルーが見れたはずだが生憎の曇空。
それでも深い青に魅了され訪れる人は立ち止まっては記念撮影していた。



そして安居渓谷の最後に出迎えてくれるのは砂防ダム。
人工的に作られた物に興味は無いが、
ダムに溜まる水がこの渓谷最も美しい青を見せてくれる。
偶然的に西日が水面に当たり綺麗だったが、
これが日中の日差しが当たっていればどれだけ青になっていたのだろうか。
訪れる時期やタイミングによって見せる光景も違うがこればかりは一期一会なので仕方ない。
いろんな角度から撮ってみたいがここもまた訪れる人が多い中での撮影なので撮影場所が限られてしまう。
また訪れる機会があればじっくり時間を掛けて撮ってみたいと思う。



砂防ダムの近くに背龍の滝があり最後に立ち寄って撮影。
緑に囲まれて落差もあって美しいが市道が入るのと水量が少ない。
かと言って水量があれば水飛沫で撮れないだろうし、
市道から狙うと近すぎて撮れないし、この滝は撮影泣かせである。



安居渓谷には2003年の秋に訪れており、
あの時は仁淀ブルーというブランド化もされておらず、ただ川が綺麗ということで滝以外に興味は無く、
今にして思えば実に勿体無いことをした。
今回は時間を掛けて安居渓谷を撮ることが旅の目的の1つでもあったので、
どのような写真に仕上がっていくかわからないが、
今回の撮影を切っ掛けに再び仁淀ブルーの撮影に挑戦してみたいと思う。


※仁淀ブルーをイメージしたドリンク

17時00分、駐車場まで戻ると駐車場にも空きが出ているがまだまだ観光客で賑わっていた。
離合が厳しいので帰りは林道を勧められており、
それなら昇龍の滝が見れるが狭い林道を12キロも走りたくないし、今日は時間も無いので来た道を戻る。
撮影はこれで終了して西条市の宿まで移動。
明日は天気が良ければ瓶が森や翠波高原に行きたかったが生憎の悪天候となり断念。
翌日、朝起きると北の空が真っ青で白い雲が勢いよく流れていた。
数日前までの真っ白な空は何だったのだろうかと思ったが、
今日の高知県山間部は大雨の予報となっており、
今回の旅で大雨に見舞われなかっただけでも運が良かったと思いながら家路へ向かった。


※帰りに天気が良いので寄ってみたが亀老山に着いたら曇った





写真館 二千年一夜