白猪の滝〜愛媛県川内町

初めて白猪の滝に訪れた時、松山市の天気予報がマイナスになると氷瀑になると教えてもらったことがある。
ここ数年、暖冬で氷瀑は疎か積雪も無かったが今シーズンは大晦日に数年に一度と呼ばれる寒波が到来し、
さらに1週間後に再び大晦日以上に強い寒波が到来。
正月三が日に白猪の滝を狙おうと考えていたが、
1週間後にさらに強い寒気が来るのなら、ちょうど3連休で狙いやすい。
1月8日は芸北ですら最高気温がマイナス8度と信じられない最強寒波がやってきた。
翌9日は早朝から天気が良かったこともあって放射冷却でかなりの冷え込みもあって、
各地の滝が凍結したニュースをよく見かけた。
白猪の滝も8日にテレビでニュースとなり3連休の初日である9日は朝から大勢の人が訪れていたらしい。
さすがに9日は凍結が怖いので少し寒波が和らぐ10日に狙うことにした。







7時00分、この日も朝から天気が良くて放射冷却の影響でかなり強い冷え込みだった。
しまなみ海道を渡り県道155号線、48号線のタオル美術館経由で川内町を目指す。
この県道は11月に初めて走ったが車も信号も少なくて国道11号線まで行くのに実に走りやすい。
桜三里の峠を越えて国道494号線を入りしばらく走ると白猪の滝の駐車場に到着。
心配していた雪は駐車場手前まで殆ど姿は見えなかったが、
駐車場近くまで来るとまるで人を拒むかのように道路が凍結していた。
下道を使っても尾道から2時間で白猪の滝まで来れたのは意外と驚いており、
もっと時間がかかると思っていただけに、改めて愛媛県は気軽に行ける場所である。
ただ今まで遠ざけていたのはやはりしまなみ海道の料金であり、
それでも以前に比べると随分安くなったのだが。



9時00分、朝早くから駐車場はそれなりに埋まっていたのはやはりテレビの影響だろうか。
狭い滝見台で混雑すると厄介なので急いで滝へ向かう。
駐車場はアイスバーンの最高クラスで冬用タイヤを履いていてもハンドルがとられる状態で、
実は有料駐車場まで行くつもりだったが断念した。
それでもタイヤ痕があるので凍結した坂道を上がっていくツワモノがいるのだろう。
お蔭で道路が圧雪されてかなり滑りやすい状況になっているので転倒しないように恐る恐る前へ進んでいく。
遊歩道からは積雪も少なく割と歩きやすい道のりで約30分かけて無事に白猪の滝に着いた。

氷瀑した白猪の滝の姿は画像で何度も見ているが実際に見てみるとこれほど素晴らしいものかと、
自然が長年時間を費やして出来た芸術はまさに人が成せる業には到底及ばない迫力と美しさである。
寒くなれば滝が凍結するのは自然の節理であるが、
数十メートル級の滝がここまで凍結するのはそれなりの条件が重なり合わなければ難しい。
ここ数年は暖冬で白猪の滝が凍結しなくなった、という話を聞いたことあるが、
今年は2週続けて最強クラスの寒波があったお蔭でここまで凍結したのだとすればまさに数年に一度の奇跡としか言いようがない。
しかも白猪の滝は他の滝と違い無数の氷柱を作り出しているのが特徴的で、
このような姿を見せるのは日本でも珍しいかもしれない。



駐車場に止まっていた車の台数の割りには滝見台周辺は人が少なく、
後から人が来ないうちに早めに撮影開始。
白猪の滝周辺は広くないので構図はほぼ固定されるため、
正直、誰が撮っても同じような写真になってしまう。
それは仕方ないとしてこの姿をいかに表現するかがポイントとなり、
また色合いをどのようにするかも撮り手の腕の見せ所。
滝自体に日差しが当たることは無さそうだが、
雲が日差しを反射して滝を明るくする瞬間があり、
また太陽が隠れて辺りが暗くなる時もある。
さすがに狭い場所でずっと居座ると他のカメラマンに迷惑なので、
その時、その瞬間を一期一会と思ってシャッターを切った。
氷瀑した滝を撮る機会が無いので、正直どうやって撮れば良いのか何が正解なのかわからず、
とりあえずPLフィルターの有無、補正もプラスとマイナスで両方抑えておいた。
果たしてどれが正解なのかは現像が上がって来てからのお楽しみ。

この日は完全氷瀑とまでは行かなかったが、若干水が流れている方が個人的には好みで、
逆に構図の幅が広がるので数カット撮影して終わる予定が、
気付けばフィルム1本消費していた。
もうしばらく眺めていたいところだが次があるので白猪の滝を後にした。
それにしても駐車場から滝見まで決して楽な道のりではないが、
完全装備している人もいれば、よくその恰好で来たなぁ、という人まで、
上りより下りの方が危険なので帰る際は十分注意して駐車場まで戻った。
駐車場に戻ると台数は訪れた時よりの倍以上が止まっており早めに来て正解だった。
訪れる人は凍結した白猪の滝が目的という訳ではなく、広場で雪遊びしている家族を見ると、
雪が積もらない松山市内から気軽に雪遊びが出来る人気スポットなのかもしれない。
雪道で駐車場まで行くことを断念した車が路肩に止めて歩いて向かっている光景も見かけたが、
パトカーも見回りしていたので無理な路上駐車は止めておいた方が良さそうだ。








滑川渓谷〜愛媛県川内町

せっかく愛媛県に来たのなら近場で氷瀑した滝を見たいと思ったが、
さすがに白猪の滝を見た後に小規模な滝を見て感動しないだろうし、
道も狭くて険しいので止めておく。
白猪の滝の近くに滑川渓谷があり大きな氷柱が楽しめるとネット情報があり行ってみることにした。
国道11号線まで戻り県道302号線を再び南下。
狭い県道をしばらく走って行くと次第に雪道となるが生活道路なので圧雪はされていないが、
最後の集落である海上地区を過ぎると圧雪道路となり11時15分、何とか駐車場に着いた。



滑川渓谷には以前一度だけ訪れたことあるが、
名前の通り滑らかな川の流れる渓谷で600m先に奥の滝がある。
とりあえず奥の滝まで行って印象に残る雪景色があればシャッターを切っていこうと先に進んでいくと、
早速、全面凍結した川が目に飛び込んで驚かされた。
よく見ると表面だけ凍結して氷の下は水が流れて、まさに天然の暗渠のような何とも不思議な現象である。
もう少し雪が積もって白い世界なら絵になりそうだが、
既に先客者によって無数の足跡が付けられているので絵にしずらい。



遊歩道に積雪はあるものの雪深く無いので割と歩きやすく、
雪景色の渓谷美を楽しみながら奥の滝まで着いた。
水量の多い奥の滝は凍結していないと思っていたが見事に凍結していた。
ただ昨日ほどの気温の低さではないので一部崩落している。
竜の腹と呼ばれるだけあって神秘的な場所で、
長年かけて作られた自然の渓谷美が素晴らしい。
周辺にはいくつか氷柱も見られるが、
本来であれば無数に氷柱が出来ているらしいは今年は何故か少なめ。
氷瀑した奥の滝だけ撮るには物足りないので、
周辺の竜の原や氷柱を絡めて構図を練った。
早めに撮影を切り上げて帰るつもりだったが、
意外と訪れる人が多く、自分が練った構図に人が入って思うようにシャッターが切れず思いがけぬ時間を消費してしまった。



駐車場まで戻ると渓谷を降りる梯子があり、
恐る恐る見下ろしてみると大きな滝が完全凍結している。
駐車場の案内板には記載されていないが、
塩嶽に続く遊歩道の途中に「前の滝」「中の滝」がある。
前回訪れた時にその滝があった記憶が無いのだが、
ただ単に見過ごしたのか、そこへ行く道が無かったのか・・・
完全凍結した中の滝はかなり見応えがあり、
その周辺の氷柱も見事なもの。
その先の塩嶽に続く下流側も凍結した渓谷は美しいのだが、
白と黒の世界はどこを切り取っても同じような写真になってしまいそうなので、
むやみにシャッターを切っても無駄にフィルムを消費してしまう。
既にフィルムが無かったので撮影したくても撮影出来なかったが、
今回の撮影で思ったことは冬の渓谷撮影は難しいということ。
やはり渓谷は紅葉の秋が一番好きだ。



気付けば14時50分。
3時間以上、外にいたせいで自分では気付いていなくてもかなり体が冷え切って体力が消耗していたのか、
車に戻ると一気に疲れがやってきた。
明日も仕事が休みで良かった。
大晦日から始まった寒波も今日がピークかと思ったが、
帰る途中、標高の高い四国の山々が雪で真っ白になっていた。




※駐車場から塩嶽まで





写真館 二千年一夜