石油工場夜景〜愛媛県菊間町

工場夜景が夕焼けと共に田んぼに映り込む画像をSNSで見つけ、
最初は岡山の水島工場の夜景だと思っていたが、
実は今治市菊間町の太陽石油だとわかり、
特に観光名所という訳でもないので場所を特定するのにグーグルマップで宝探しをしている気持ちで何とか見つけることが出来た。
交通費はネックだが場所的にさほど遠くないので行こうと思えばいつでも行けるし、
実際に去年の12月、宿毛の帰りに寄って下見をしている。
問題なのは田んぼに水が張る時期に特定が難しかった。
田植えといえば5月上旬というイメージがあるが、
地域によっては6月に入ってから行うこともある。
ネット上に出ている情報から6月上旬から中旬と予想。
あとはSNSの情報をこまめにチェックしながら撮影するタイミングを見計らった。


※昨年の12月撮影




田んぼに水が張られていなければ行っても意味が無いし、
田植えが終わって苗が成長すれば水鏡になりにくい。
水を張ると言っても地主によってはタイミングも違うだろうから、
その地域全体に水が張られるタイミングを狙うのは本当に難しいと思う。
そんな中、6月12日に水を張るとSNSで情報を見つけ、
それに合わせて12日か13日の土日に予定していたが、
天気が微妙だったので次の週末に見合わせた。
それが吉と出るか凶と出るか・・・


※田植えは全体的に終わっていたが何故か田んぼに水が無いところがある。

上空は晴れているが雲も多く、出発をためらう状況だが夕方の晴れ予報を信じて14時30分に出発。
どんなに雲が多くても太陽が沈む時間帯に上空一面が夕焼けに染まることもあるが、
そんな贅沢はいらないのでせめて夕方に少しでも厚い雲が掃けて青空が見えればそれで良い。
現地に着いたのは16時頃。
太陽石油の工場を目印に踏切を渡れば田んぼが広がる景色が広がっているので迷うことはまず無い。
ただ問題なのは駐車場で、少し広めの路肩に止める人が多いようだが、
万が一、パトカーが取締りでくればアウトになる可能性があるので、
グーグルマップで予め目を付けていた少し奥へ行った池の空き地に止めることにした。
広い駐車場も見かけるが関係者用駐車場だと思うので止めない方が無難。
事前に買っておいた弁当を食べて腹ごしらえして現地へ向かう。
止めた所から約5分と離れているようで意外と近かった。


※工場に近づいた場所からだと迫力がある

太陽が沈む西の空はお世辞にも良いとは言えなかった。
それでも刻一刻と変わる空に期待して現地調査。
チラホラとカメラマンを見かけるが撮影する場所に困ることは今のところ無さそうで、
どこから狙うか散歩がてらに構図を探す。
工場を全体的に見渡せるお地蔵ポイント、
工場を近くでより近くで見える場所や池からのポイントも悪くない。
今日は何故か池周辺にカメラマンが集中していたが、
実は最初から撮る場所はお地蔵ポイントと決めていた。
ただ現地に着いて想定外だったのは何故か田んぼに水が無い場所が数か所あり水面に映り込まない。
そういう意味では池ポイントの方が水が綺麗に張られているのでカメラマンが集中していたのかもしれない。
お地蔵ポイントでも池に映り込むがどことなく中途半端な感じに見えるが、
やはり田んぼの構図、工場の配置はどのポイントよりも自分好みだったこともあり他から狙うことはせず1ヶ所集中で行く。


※池の前より、工場に少し角度がついているので個人的にはあまり好みではない

それにしてもせっかく橋代を払ってまで来たのに田んぼに水が無いのは想定外で、
日照りで水が枯れることがあっても昨日までの雨で田んぼに水はたっぷりあるものだと思っていた。
たまたま農作業をしている人がいたので話を伺ってみると、
今年は苗に付いていたタニシが大量発生してあっという間に苗を食べてしまうので、
水を抜いてタニシを駆除しているとのこと。
田んぼに水が無ければ逆に苗に悪影響を及ぼすのでは?と思ったが、
高い農薬を撒いて駆除する方法や水を張った状態だったり所有者の考えや経験に差があるようで、
10日ほど水を抜いて米にどのような影響があるか実験的な意味も込められているらしい。
この時期になるとカメラマンがたくさん見かけるので不思議に思っていたが、
農家はタニシ駆除で大変だと頭を抱えていた。
確かに田んぼを見るとタニシがウヨウヨしており水の無い田んぼではタニシが干からびていた。


※時々電車が走る。撮影するなら午前中が良い。



17時30分、西の空に居座っていた雲が徐々に無くなり青空が見えていた。
西日が田んぼや工場に当たり水面に空の映り込みが目立ってきたので撮影開始。
時間が経つにつれて空の状況、太陽の位置が変わり景色も微妙に変わっていくのが風景写真の面白いところ。
梅雨時期なのに秋のような雲が見れるのは貴重であり、見たかった景色に出会えて来た甲斐があった。
これで綺麗に夕焼け空になれば言うことはないのだが、
太陽が沈むまであと2時間、果たしてどうなるか。


※池から田んぼを俯瞰。一面水鏡ならここからでも良かったのだが。



太陽が傾くとカメラマン以外にも見学者もやって来て、実は穴場的名所なのかもしれない。
正式な名所が無ければ観光名所でも無いので今治市や地方雑誌としても紹介を控えているのか、
ネットでもあまり見ることは無いので知名度はそこまで高くない。
もし世間に知れ渡れば訪れる人も多くなり、結果的に地元住民とのトラブルが増えそうなので、
せっかく訪れる人がいるのなら地元住民有志で催し物や空き地を利用して有料駐車場とかがあっても良いと思う。


※空が良い感じになってきた

19時00分、太陽も随分と沈み工場付近まで落ちて来た。
肝心の空は再び雲が増えてしまったが太陽は雲から抜け出し強い日差しを出していた。
次第に西の空は赤く染まり夕焼けショーが始まった。
上空の雲が無ければもっと広角で撮りたかったが、
敢えて標準で撮ることで工場が際立って絵になったような気がする。
雲が多くても意外と赤く焼けたのはそれだけ空気が乾燥して澄み切っていたからなのかもしれない。
そういえば今治へ来る途中も四国の山が綺麗にはっきり見えていた。
それでも上空は水分が多く含まれていたようで、
小さな彩雲が発生して夕焼けとの共演となり楽しませてくれた。
あまりシャッターを切ることは無いと思っていたが、
持参していたフィルムはあっという間に無くなりつつあり、
それだけ楽しく撮影していた自分がいた。
刻々と変わっていく景色と田んぼに映り込む景色。
完璧とまでは行かないがそうなると完璧に完成された水鏡の景色を見てみたいと思うのは贅沢だろうか。
田植え前に一面に貼られる水鏡に出会えるのは1年に数日であり、
そのタイミングに合わせて夕焼け空に出会えるのは本当に奇跡の瞬間に違いない。
今日は少しだけ奇跡の瞬間に立ち会えたような気がしたし本当に来て良かった。


※再び雲が増えてきたが夕焼けは確定。彩雲も出ていた。


※梅雨時ならではの奇跡の夕焼け

19時18分の日の入りがクライマックスとなり数分だけ空が赤一面に染まった。
その後、点灯していた工場の灯かりがより目立つようになり工場夜景が田んぼに映り込みだした。
事前露光しておけば良かったのだが、目の前の景色を撮ることに精一杯でそれどころではなかった。
こんな時のためにやはりカメラはもう一台持っておくべきだったか。
19時30分、撮影を終えて一応もう一度周辺を散策してみた。
確かに池から見る景色も悪くないし、前に行くと工場が近くに感じて迫力があったり、
暗くなって改めてわかることもある。
もし次回があれば違う角度から狙ってみても良さそうだが、
今日以上に田んぼの条件が整っていたらきっとまた同じ場所から撮るに違いない。




写真館 二千年一夜