三江線ファイナル〜広島県作木村、島根県大和町、羽須美村、美郷町

約2年撮影してきた三江線も今日が最終日ということで、
最後の三江線の景色を無理をせずいつも通りに楽しみたいと思う。
4時に家を出発してまず最初に着いたのはすっかりお馴染みの熊見トンネルの北側附近。
川の流れが穏やかで風が無ければ三江線が水鏡になる時もある。
ケアラシが発生するポイントでもあり、去年からケアラシと三江線を一緒に撮りたいと思っていたが、
霧に阻止され思うように撮影が出来ずにいた。
今日は気温が下がる予報なのでケアラシが出ると予想して最後のチャンスとして朝一番をここに選んだ。
霧が出ればシャッタースピードが出ないので撮影は諦めるつもりだったが、今日は珍しく霧の無い朝になった。
朝の日差しを期待したが太陽が昇る時間が早くなったと言え、さすがに6時台ではまだ江の川の日差しが当たらず、
マイナス1度程度だとケアラシも少なく、想像していた絵とはかなりかけ離れてしまったことに悔いが残る。
6時台の江津行き9422Dはゆっくりと通過。
この区間は江の川沿いをゆっくり走ってくれるので何だか観光列車のように見える。





20分後にやってくる三次行き9421Dは少しだけトンネル側へ移動して狙う。
ここでようやく日差しが山の斜面を射し、少しだけ景色が明るくなってきた。
霧が出ていれば当然見ることの出来ない景色であり、
この光景にもっと早く出会いたかった。
江の川に日差しが当たればケアラシも多く発生したかもしれないが、
その願いは叶わず朝の日差しを浴びて通過していった。
朝から多くのカメラマンで賑わうと予想したが、意外とこのポイントはカメラマンは少なかった。
果たしてどこに集中しているのかわからないが、
桜が予想以上に早く満開になったことで、上手い具合に分散したか、
もしくは人気スポットに集中したのかもしれない。



美郷町内の桜が例年より1週間早く見頃を迎えている情報を町内のHPに記載されていたので、
それならきっと粕淵も見頃を迎えているに違いないと北へ移動。
先ほどの9421Dが遅れて通過したせいで、粕淵までのタイムリミットは30分だったが、
信号も車も少ない国道375号線なので制限速度内で走っても何とか間に合った。
潮駅周辺は驚くほどの混雑振りだったが、粕淵駅周辺はさほど混雑はしていない。
ホームにある桜は見事に満開で上空は青空が広がり朝の日差しを浴びる桜並木が美しく、
この光景はもう二度と見れないと思っていただけに来た甲斐があった。
7時台の三次行き9423Dを第一江川橋梁を入れて撮影。
粕淵駅前にある田んぼの代掻きは三江線沿線の中でも遅い方で、
当然のことながら桜の咲く時期に水は張られることは無い。
もし水が張られていたら間違いなく日本指折りの絶景鉄道沿線になっており、
廃線関係無しに毎年多くのカメラマンや観光客が訪れていたに違いない。



数十分後に江津行きの9422Dが来るので、
場所は移動せず少しだけ構図を変えて撮影。
この時間帯はホーム以外、あまりカメラマンの姿を見かけず、
思いのほか静かに撮影が出来て良かった。
これも近くに潮駅があるお蔭である。



先ほど三次行きの9423Dを追い抜いて再び熊見トンネル付近で待ち構える。
せっかく桜が咲いているのだから、もっと良い場所があったかもしれないが、
三江線南線区間は午前中でなければ日差しが当たらないので、
桜と絡ませるのなら午後に回せばよいと考えていた。
8時を過ぎればすっかりこの付近全体に日差しが当たり、
通常だとこの時間帯でも霧で曇っていることが多いが、それを考えると今日は奇跡的である。
新緑が目を出すには少し早いが、それでも今年は桜の開花が早いので、
新緑の目も例年に比べると少し早いのか、川沿いに新芽が顔を出していた。
この区間は山肌に岩が露出して奥深い渓谷らしい構図で狙ってみた。
個人的には秋の紅葉シーズンに狙っていたが、
殺風景なこのタイミングで狙えたのは運が良かったのか・・・





三次行きの9423Dを見送った後、10時台石見川本行きの9424Dを狙うべくカヌー公園で構図を練っていた。
カヌー公園一帯の桜は本当に見事で他の桜スポットに引けを取らない美しさであり、
ここで三江線と一緒に撮りたかったので9423Dは敢えて追いかけなかった。
いろいろ候補地を絞ったが、桜と三江線だけでは面白くないので、
絶対的条件である江の川を入れる構図を探していた。
時間をかけた甲斐あって拘りの場所を見つけることが出来たが、
これが追っかけながらだと、きっと中途半端に終わっていたかもしれない。
記録写真ならそれでも良いが、拘りの1枚を撮ろうと思えばそれなりの時間をかける必要がある。
時間が経つにつれてカメラマンが増えてきた。
それどころか上空にはヘリの音まで聞こえてくる。
しかも1機だけでなく3機くらい飛んでおり、
本来なら静かに流れる江の川がこれでは雰囲気的に台無し。
カヌー公園は三江線を代表する有名な撮影場所であり、個人的にも好きで良く通っては撮影し、
時にはレストランで川のせせらぎや鳥の鳴き声を聴きながらコーヒーを飲んだりいつも心を癒してくれる景色だった。
三江線はもう走らないが、この鉄道風景はずっと残っていて欲しい。



石見川本へ向かった9424Dを追いかけるべく車を走らせようと思いきや、
ここで予想外な光景を目にする。
何と国道375号線が渋滞になっているではないか。
どうやら川の駅にある信号で渋滞が発生しているらしいが、これには地元の人達も驚いていた。
川の駅を過ぎると渋滞は解消したが、江平駅もたくさんのカメラマンで賑わっており、
朝の静けさが嘘かと思うくらい、最後の三江線を一体どれだけの人が訪れているのか想像も出来ない。
沢谷駅付近に菜の花畑があるので行ってみようかと思ったが、
先ほどの渋滞で時間に余裕は無く、そもそも菜の花畑がどこにあるか把握しておらず断念。
また粕淵で狙うには面白くないし、出来れば違う所で狙いたい。
浜原駅を過ぎた辺りで大きなモクレンがあり、
その周辺にある桜を絡ませて苦し紛れの構図で狙う。
この場所は三江線関係無しに時間帯によっては面白い写真が撮れそうなので、
機会があればいつか撮影してみたい。



これで午前の便は終了。
三次行きの9425Dまで時間があるので美郷町内で昼食を買い、今後の予定を立てながら食事をとる。
それにしても3月下旬とは思えない暑さで、ついこないだまで大雪で三江線が運休していたとはとても思えない。
今年の異常な寒さとここ数日の季節外れの暑さで例年より早く桜が一気に満開になり、
それは誰もが去年が最後だと諦めていた桜と三江線のショットを可能にさせたまさに奇跡的な1日となった。
潮駅に立ち寄ってみたが相変わらずカメラマンが多く観光客も賑わっていた。
雪で被害が出た桜並木だったが、意外と綺麗に咲いていたので安心した。
今日は1度くらいここで狙おうかと思ったが、あまりの人の多さに敢えて避けた。
来年は誰もいない静かな潮駅を狙ってみるのも悪く無い。



潮駅は凄い人だったが宇都井駅も負けずと人が多い。
天空の駅としていろんなメディアに紹介されて一気に火が付いてしまった。
廻りに何も無いひっそりとした所に突如現れるコンクリートの建物に違和感があるのが魅力の1つでもある。
最終便に合わせて花火が上がるので、とりあえず三脚を置いて場所を確保。
既に三脚が立てており、これが夜になるとどのくらい混雑するのか今の時点では想像が付かない。
意外と他所へ行って空いているかもしれないし、
去年のINAKAイルミ以上に大混雑になるかもしれない。



県道55号線を上がった所に上野地区を俯瞰出来る場所があり、
確か随分前に赤馬滝を撮りに行った時に走った記憶がある。
時間があるのでちょっと寄ってみると意外と視野は狭く、
既にカメラマンが待機していたので雰囲気だけ確認。



県道55号線を降りたところに大きな桜や石州瓦の家、田んぼが広がる喉かな光景に目を惹かれ、
桜が咲いていなければまずここで狙うことは無かったはずだが、
予定外ながらここで9425Dを狙うことにした。
まだ少しだけ時間があるので車内でしばし仮眠。
心地良い風に当たりながら寝ているとヘリの音で目が覚め撮影の準備にとりかかる。



9425Dを撮影した後、30分後に江津行きの9428Dが通過するので急いで場所移動。
30分と言っても9425Dが遅れていたので実際にどのくらい時間に余裕があるのかわからないが、
とりあえず先週も撮影した江の川沿いから狙う。
5月になると新緑が西日に当たり輝いてとても綺麗な場所であり、
ダイヤ改正により15時台にこの区間を走ることになったが、
たった半月間しか走らないのはあまりにも勿体無い。
せめて去年の今頃に改正していて欲しかった。



16時前になり再び宇都井駅に戻り、車を止めるところが無いかもと心配したが柳原地区の空き地は意外と空いていた。
先ほどの時とは打って変わって三脚の数が増えており、
三江線最後は宇都井駅で迎える人が多いようだった。
どこからともなく花火が上がる情報が飛び交い、
現地で情報を得たカメラマンは、一体どこからどのくらいの規模が上がるのか悩んでおられた。
最終便まで時間があるので多くの人で賑わっている宇都井駅周辺を散策して時間を過ごす。
INAKAイルミの時みたいに飲食ブースは無かったが、
テント市で地元のお土産や軽食が販売されてたくさんの人で賑わっている。
17時台の三次行き9427Dが間もなくやって来るので、
ホームの上にいるたくさんの人達をシルエットにして撮影してみた。



その後、30分後に18時台の9430Dが宇都井駅に到着。
大勢の人が手旗などで見送る姿、またある家からは童謡「ふるさと」が聞こえてきたり、
明日からもう三江線が走らないのかと思うと、あまり縁も縁も無い自分ですら寂しさのあまりウルっときてしまう。



暗くなって宇都井駅に青色い照明が目立ち始めてきた。
最後に向けてここ数日前からINAKAイルミの一部が復活され、
もう二度と見られないかと思っていた三江線とIANAKAイルミが再び見れたのは桜と同じく奇跡だった。
しかも花火が上がるサプライズ演出を知った以上、最後は宇都井駅と決めていた。
花火は500m離れた採石場から最終の上りと下りに停車する間、数十発の花火が上がる。
宇都井駅で散策していると、たまたま遭遇した担当花火業者の灰示花火さんと軽く挨拶して丁寧に打上明細まで教えて頂いた。
4号玉がどこで開花するかが課題だが、理想はホームの上で開花して欲しい。

いよいよ19時台三次行きの最終便9429Dがやってきた。
思ったほどの人混みでは無かったが、
それ以上にカメラマンの人数は多かったように見える。
汽笛を鳴らしてやってくる姿はまさに銀河鉄道。
停車と共に花火が打ち上がったが、ここで想定外にも花火が思った以上に高く上がらずホームに被ってしまい、
何とも中途半端な絵面にショックが隠せない。
普段は大きく感じる4号玉も500m離れるとこうも小さく感じるものなのだろうか。

最後のチャンスである20時台の浜原行き9432Dを撮る場所を検討しなければならない。
廻りの話によると後ろに下がればホームの上に花火が上がるらしいが、
それだと稲穂イルミは見えないし、カメラマンや電線などが映るので後ろの下がることはまず有り得ないと思っていた。
先ほどの三次行き最終が出た後、若干カメラマンの動きがあったので、
稲穂イルミの前に移動して仮に場所を確保。
前に出ることでホーム下に花火が映る構図を考えたが、
それはそれであまり個人的には好みでは無かった。
隣に読売の報道記者がパソコンで先ほどの写真を編集していたので見せてもらったが、
思いのほか悪く無かったのと、あまりのカメラマンの多さに選択肢が無かったので最終的にここに決めた。



そして20時台の浜原行き、事実上最後の三江線の撮影が終わった。
汽笛を鳴らして行く姿は写真では表現出来ないが、
撮影した写真を見ると、今日の出来事が思い出せるように仕上がってくれればと思う。
朝から霧の無い快晴に始まり、例年より早い桜の満開に出迎えられ、
この季節には珍しく春霞の無い澄み切った青空の中を走り、
最後は花火が上がり多くの人に見送られていく光景を見ることが出来て、
今日は本当にいろんな奇跡が起きた三江線最後の1日だった。



写真館 二千年一夜